遺品

          彼女が私宛に遺した品が届いた。



          先週、札幌に住むバンド仲間のJさんが車で運んでくれた。
          Jさんと会うのは久しぶりだ。
          久しぶりの再会が、こういった形になるなんて思いもよらなかった。



画像




          Eちゃんが亡くなって1カ月が過ぎた。


          Eちゃんは旅立つ前にきちんと身の回りの物を整理して、
          誰にどの品を届けてほしいのかわかりやすくメモを書き残していたらしい。
          使える家電や、袖を通してない衣類などは、被災なさった方たちへ。
          未使用の猫砂やケージなどのペット用品は愛護団体へ。
          スタジオで共に汗した楽器や、大切なレコードやCDなどはかつてのバンドのメンバーたちへ。
          バンマスでもあるドラムのJさんにそのすべてを託していた。



画像




          Eちゃんの死は、日を追うごとにますます信じられない現実となり、
          いまだにその死を体感できないでいる。
          なんだか、どこか遠くの外国で、今も元気にハスキーなあの声で
          ソウルやらロックやら歌いまくっている気がしてならない。
          考えてみたら、こちら側からみたら天国だって言ったって、
          遠い外国みたいなもんじゃないの。



画像



   
          お葬式もご家族の方たちのみで執り行われたので、私は「最後の彼女」に会っていない。
          最後の姿は昨年の洋楽カラオケで、クイーンやエアロを爆唱するいつものEちゃんの姿。
          今となってはそれでよかったような気もする。
          Eちゃんにとっても、私にとっても。



画像




          私のところにはブルースやソウルを中心としたレコードとCDがそれぞれ150枚ほど。
          LPは古いものが多く、CDは90年代以降の新しめのものまでと幅広い。
          ターンテーブルまで付けてくれるところがEちゃんらしいなと思うと、
          おもわず笑ってしまった。

          他にはコンサートのパンフやチケットの半券など、思い出の詰まったものまで
          LPの保護ビニールにはさんであった。


          そして。



画像




          いっしょにたくさんライブをやったEちゃんのギターも私のところにやってきた。
          フェンダーのテレキャス。

          さすがにこれを目にしたときは…涙が止まらなくなってしまった。
          このギターが私の手元にある、という現実。
          やっぱり、本当にEちゃんは死んでしまったんだな。



画像




          これら遺された品々に、手紙が添えられていた。


          お祝いのカードや年賀状など、いつも手書きのものを送ってくれる彼女だったけれど、
          最後の手紙はワードで打たれたものだった。
          死の2日前に書かれたその手紙は、淡々と冷静に、
          凛とした静けさが伝わるような文面だった。

          
          いつもなら元気いっぱいに、感情をあらわにして書き綴るEちゃんだった。
          けれど最後のその手紙は、おなじ彼女が書いた文章とは思えないほど落ち着き払っていた。
          未練や執着、思いをすべて洗い流して、捨て去って。


          いまだに現実のこととして受け入れられないし、
          それよりなにより、あんなに楽しそうにカラオケ行ったり音楽の話をしたりしていたのに
          その影でもう何年も前から自分の死ぬ日時を決め、用意周到に事を運んでいたなんて。
          ウソでしょう?悪い冗談としか思えない。


          そう思いながらも、これで彼女は辛く重い荷から解き放たれて、
          今はきっと安らかに、ゆっくりと眠ることができるようになったのだから
          これでよかったのかもしれないとも思う。


          あちらの世界へ旅立つかたちの一つとして、
          そして一つの生き方の選択肢として、
          自分で自分の命を絶つということもあり得るのかもしれない。



画像




          でもなぁ。
          やっぱり自ら死んじゃ駄目だよ。


          「自殺という選択肢があってもいい」と思いつつ、「自殺はやっぱダメ」と思う自分がいるので
           ずっと堂々巡りしてる。
           答えはきっと出ないだろうし、出さなくていいとも思ってる。



          まださすがにEちゃんのギターを弾く気にはならないけど
          レコードとCDはちょっとずつ聴いてみよう。

          私あてに遺してくれたのだから、私が聴けばきっと喜んでくれると思うんだ。






画像












ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 7

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック